「スタッフのコラム」を更新しました!(R3.8.1)

○マスクの違和感~アモーダル補完~

 

以前から、本来の衛生上の理由ではなく、常に人前ではマスクをしている“伊達マスク”の人はいましたが、あくまで一部の人でした。ところが、現在のコロナ禍にあっては、マスクがマストアイテムになりました。初対面の時から、素顔ではなくマスクをした状態であることが常態化した感じになっています。マスクをした顔に慣れてしまうと、その人が何かの拍子にマスクをはずした顔を見た時、イメージが異なってしまうというのか、違和感があり、アレっと思うことはないでしょうか。マスクなしの顔を知っている人の場合、マスクで隠された部分を記憶で補い全体を構成しています。ところが、初対面からマスク姿で、鼻と口を見たことがない場合には、これまで見て来た人々の鼻と口を平均化したものを当てはめる、脳の働きがあります。これを『アモーダル補完』と言います。しかも、脳にとって心地よいと感じる美しいものほど記憶されやすいらしく、それが影響して平均化とはいえ美化されたものになりがちだと言われます。

もっとも、いくら初対面がマスク姿であっても、マスクなしの顔に慣れることにより、知っている人となります。当然、違和感はなくなるわけです。その人の持つ本来の鼻と口が認識されるという、真の補完が行われ、それが記憶されることになるのです。でも、感染が収まらない限りは、今の状態が続くのでしょうね。

 

余談ですが、以前マスク美人という言葉がありました(今もあるのかな?)。現在では、こんなことを言うのとセクハラになりそうですけど。これも上述したように見えない部分が美化されたからですが、その他にもいくつか条件があるようです。マスクにより、目元が強調される。隠れた部分を理想的に想像してしまう。マスクが大きいことで、全体的に小顔に見える。年齢がわかりにくい。表情がわからないことでミステリアスに感じるなどです。そう言えば、マスクをして、ものまねメイクを施す“ざわちん”が、テレビなどを賑わせていた時期がありました。真似をするのは、芸能人などよく知られた人なので、マスクで見えない部分も記憶で補えて似ていると感じたのかと思います。ところが、マスクを取った顔で活動するようになると、イメージが違ったから、魅力がなくなったから、似せるように画像を加工していたなどの理由で、メディアへの露出が減ってしまったようですね。画像の加工云々は論外ですが、マスクをはずしたことでイメージが変わった、魅力がないと評されるとは、『アモーダル補完』の効果が災いしたのでしょうか。

 

でも、違和感と言うなら、その昔「わたし、きれい?」と言って、マスクを取ると口が大きく裂けていた、『口裂け女』はその極致となるのでしょうか。

 

情野