「スタッフのコラム」を更新しました!(R4.6.1)

〇「共感的な理解を深めるもの…」

 

 私たち心理士、カウンセラーと称される職業にある者は、「共感的な理解」を大切にしています。

でもこれは、特別な事ではなく、「そうだったんだねぇ。」「辛かったね。」など、相手の気持ちに寄り添うような声かけも含まれ、みなさんも日頃行っている事だと思います。私自身も周囲の方のそういった心遣いにとても救われています。そして、私自身も相手の話を聴かせて頂く時には、そうした「共感的な理解」を心がけています。そしてその時には、相手の言葉からどんな状況だったのか想像力を働かせる事もしますが、自分自身も過去に同じような経験をした事がある場合はその時の感情を少し取り出して参考にする事があります。もちろん、自分が体験した事と相手が体験した事は同じものではないので、誤った理解をしないように気を付けています。

 

 ご高齢になられても第一線でご活躍なされた、医師の日野原重明先生は、ご著書の中で次のように述べられています。

 

 ~ほかの人の痛みをそのまま体験することはできません。 

   けれど、共感することならばできます。~

 

日野原先生は、ご自身が大学1年生だった時に、結核を患い8ヶ月もの間ベッドから立ち上がる事ができずに大変苦しい思いをされました。病気になると、体の具合が悪いだけではなく、心も元気がなくなってしまうこと。勉強できずに、強い焦りを感じたこと。夜の病棟で感じた絶望感…。その後大変素晴らしいご功績を残される医師になられたわけですが、この時の辛い体験が後に医師として働く上で役に立ったとおっしゃられています。

 

~患者さんがどんな痛みで苦しんでいるのか、そして病気のためにどれほど気持ちがふさいでしまっているのかを、わたしは自分の病気の体験を手掛かりにして想像することができます。~

 

 今、悩んでいることや辛い思いをしていることは、誰かの苦しい気持ちに共感するその時に、そっと取り出せる大事な財産になるかもしれません。そして、その深い共感的な理解は誰かの生きる力を応援してくれるのだと思います。

                                           阿部

 

 

【引用文献】 日野原重明  十歳のきみへ-九十五歳のわたしから

 

 (株式会社冨山房インターナショナル)