「スタッフのコラム」を更新しました!(R4.4.27)

○賢いハンス

 

 よく、「うちの犬は言いつければ新聞を取って来る」だとか、「うちの猫はいただきますとしゃべる」とか、自分が飼っているペットの賢さを自慢する日本国民の何と多いことか。(『チコちゃんに叱られる』風に)

 

 かつて、19世紀末から20世紀初頭にかけた頃のドイツに人間の言葉を理解し、足し算、引き算、掛け算、割り算など計算は言うに及ばず、日付、時間、音階も理解できることで一躍名をはせた一頭の馬がいました。ハンスという名前でしたが、人語を理解し計算ができることから、『りこうなハンス』と呼ばれていました。心理学の教科書には、“賢いハンス”または“賢馬ハンス”などと記載されています。

 ドイツ人のフォン・オステンさんが、高等動物は人間と同じくらいりこうであると考え、1頭の馬ハンスを約2年の歳月をかけて教育しました。するとハンスは自分の考えを伝えるのに「そうだ」、あるいは「ちがう」というふうに首を振りました。その他の種類の答えを要する質問(算数)への回答は、前足のひづめでとんとんと床を打ち鳴らして知らせるようになりました。それから、オステンさんはハンスが質問に対し首を振ったり、ひづめを打ち鳴らす様子をドイツ中見せて回りました。2年もすると『りこうなハンス』の名で有名になりました。実際は多くの人は半信半疑でしたが、オステンさんはハンスを金もうけの道具にはせず、見物料も取りませんでした。批判的な質問にも嫌がらず答えていました。調査委員会が結成されても受け入れていました。その委員会によって、正真正銘賢い馬であるとお墨付きをもらったことがあります。その後、結果を聞いた心理学者のプングストが,検証をやってみました。問題の正解を知らない人をハンスの前に置くと、ほとんど正解しなくなりました。ハンスは質問者をじっと見つめながら、ひづめをいつまでも打ち鳴らしていました。実はハンスは本当に答えを知っていたわけではなく、人の表情や動作等に反応していたことがわかりました。

 

 後に『クレバー・ハンス効果(現象)』と命名され、観察者期待効果(観察している人が望む結果を導き出す)と言われました。また、人間や動物は他の個体の表情や仕草を参考に判断することが多いと社会心理学でも言われることがあったとか。もしかすると、馬がその場の空気を読んでいたのでしょうか。ただ、ハンスを教育したオステンさんは、癇癪持ちで、できないとハンスにお仕置きしたりきつく当たったそうなので、怖くてそうなったのかも知れません。馬にしても、人間にしても、痛い思いはしたくないですからね。

情野