「スタッフのコラム」を更新しました!(R2.7.29)

 

専門用語の誤用?

 

 心理学(精神医学)の専門用語の中には、本来とは違った意味で、広く一般に使用されているものがあります。それは誤用と言えるものですが、今回その中の二つについて触れてみたいと思います。

 まず、『精神年齢』という用語ですが、一般的には会話の中で「私は精神年齢が低いの…てへっ」という使われ方をするようです。これは、私は年齢の割に(性格などが)幼いという意味で使っています。だからと言って、決してネガティブなものではなく、むしろ真逆で、暗に「だから魅力的でしょ」とアピールする感があるようなものです。これは、個人的な意見に過ぎないかも知れませんが。

それでは『精神年齢』とは何かと言えば、1908年にフランスのビネーという人が知能検査を作る際に、生活年齢(実年齢)に比し、どの程度の年齢レベルにあるかで知能(IQ)を算出するようにしました。その到達している年齢レベルを『精神年齢』としたのです。本当は知能年齢というものなのですが、元の『mental age』を日本語に訳す際『精神年齢』としたことが,誤用を生んだとも言えます。心理学的には,『精神年齢』と『知能』はイコールなので、「私は精神年齢が低い」というのは、心理学的にはどういう意味合いになるか、皆さんおわかりかと思います。

 

また、『トラウマ』という語があります。もとはギリシア語の『傷』という意味で、それが『心(精神)的外傷』という意味になり、現在に至ります。本来は、『死にそうな体験をしたり、目の前で誰かの死を目撃したりする』ような重みのある意味合いの用語です。それが、「シメサバに当たってトラウマになっちゃったよ」「あの映画チョーこわくてマジトラウマ」というふうに軽く使われることが多々あるようです。たとえば「悪くなったシメサバ食べて、当たってお腹こわしてひどい目にあったから、もうシメサバなんか見るのも嫌」という意味でしょうが、それを『トラウマ』と一言で説明できる便利な単語として、利用されやすくなっているのでしょう。

  言葉は使われているうちに、また時代とともに意味内容も変化することがあります。私は、このような言葉を聞くにつけ、内心で「それは本当の意味では…」と思わなくもありません。それでも、別に専門用語として使っているわけじゃなし、目くじらを立てるほどのことでもないなと、スルーしているのが現状です。

   

情野